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高射砲塔

高射砲塔とは、第二次大戦中、連合軍の爆撃機から、ドイツの都市を防衛するために建設された要塞である。しかし、その建造には膨大な費用と労力を要する事から、ベルリン、ハンブルグ、ウィーンなどの重要都市に限定して建設されていった。各高射砲塔のデザインはそれぞれ異なっており、大きさ、武装も様々である。どの塔においても対空火力の強力さは折り紙つきで、その絶大な火力と防御力は、地上軍との戦闘においても有効であった。


高射砲塔は、多数の高射砲を装備したG塔と、対空射撃の精度を高めるため、ヴュルツブルクレーダーやマンハイムレーダーなどの高度な射撃指揮装置を備えたL塔とが、セットで建設され、迎撃も両塔が連携して行う。 G塔はコンクリート製で壁は2mから2.5mもの厚さがあり、高さは40mから50m、その頂部に12,8cm連装高射砲などの大口径砲を4基装備、塔の上部の張り出しには自己防衛用に37mmから20mmの口径の対空機関砲が12基装備されている。 砲塔内部には発電機や弾薬庫、人員の居住施設、貯水槽が設置されており、自立的な戦闘が可能だった。設計段階での収容人数は8千人程であるが、最大3万人を収容したとの記録もある。


これらの高射砲塔は、肝心の連合軍爆撃機との交戦の機会はあまりなかった。だが、ドイツに侵攻してきたソ連軍との間では、激しい地上戦を行っている。こうした高射砲塔群の中でも、有名なのがベルリンのツォー高射砲塔である。12,8cm連装高射砲を4基装備し、その強力な火力と防御力でベルリンに押し寄せるソビエト軍と熾烈な地上戦を展開し、ライヒスタークに押し寄せるソ連軍にも大きな損害を与えた。 大物量を誇るソ連軍でも、さすがにこの要塞を武力で攻略するのは手に余り、ツォー高射砲塔に対して軍使を派遣して降伏せしめている。


第二次大戦終結後、高射砲塔は無用の長物となり、解体が検討されるが、それは容易な作業では無かった。高射砲塔は余りにも巨大で頑丈であったため、その解体にも莫大な費用と労力を必要としたからである。ベルリンにあった高射砲塔は苦労して解体されていったが、ハンブルクとオーストリアのウィーンには今でも高射砲塔が残されており、周囲を圧する異様な迫力を醸し出している。



Flakturm.jpg








↑高射砲塔




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Comment

はじめまして - JI1V

2012.04.30 Mon 06:42 URL [ EDIT ]

高射砲塔で検索して来ました。

本日ウィーンに来まして、明日かあさってに高射砲塔をみてくる予定です。Blogにもあげるつもりなのですが時間があるのかどうか。

Re:はじめまして - 管理者からの返答

2012.04.30 Mon 09:09

>JI1Vさん

こちらこそ初めまして。

私も高射砲塔の威容をこの目で見てみたいものですが、それはおそらく叶わないでしょう。なので、JI1Vさんが代わりにアップして頂けると私だけでなく、戦史や兵器に興味を持っている他の人にとっても有益な情報になるでしょう。見学の時間が取れる事を祈っています。

時間がなくてBlogが書けません - JI1V

2012.05.02 Wed 05:02 URL [ EDIT ]

本日、高射砲塔を2つだけ見てきました。平和そのもの、であるアウガルテン公園に丸いのと四角いのが鎮座していますが、コンクリートむき出しで他と違って違和感があり、威圧感もすごいです。
その後に市内の有名な寺院に上って、そこの展望台からアウガルテン公園のものも含めて写真を撮影してみました。後日アップロードしてご連絡申し上げますのでご覧下さい。

高さ、位置とも防空としては不完全な気がしました。もっとたくさん作らないとダメな気がします。でもウィーン郊外にも沢山高射砲陣地があったのかもしれません。

Re:時間がなくてBlogが書けません - 管理者からの返答

2012.05.02 Wed 19:24

>JI1Vさん

現在、高射砲塔より大きな建物は幾つもありますが、それでも戦争を目的として作られた建物は、平和な時代の建物とはまた違った異様な迫力があります。現代人から見れば不気味な威圧感しか感じないでしょうが、当時、爆撃を受けていたドイツ人からすれば、守護神の様に頼もしく映ったのではないでしょうか。これはナチスの巨大兵器好きな性向と、戦争という非常事態が生んだ産物でもありますね。これほどの建造物は、ヨーロッパ屈指の大国であるドイツといえども大量に作るのは困難だったでしょう。頑丈で無骨な建物なので、現地の人々にとっては疎ましく思える存在かもしれませんが、個人的には戦争博物館として後世にまで残してもらいたいところです。

わざわざ経過を知らせて頂きまして、ありがとうございます。高さ、位置とも防空としては不完全な気がするとのJI1Vさんの評は、現地を見た人ならではの感想ですね。また、アップされたなら見に行かせてもらおうと思います。

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このブログでは主に戦国時代・第二次大戦に関しての記事を書き綴っています。
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