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景徳院、武田氏滅亡の地

景徳院は、山梨県甲州市にある寺である。徳川家康によって建立された寺で、この地で終焉を迎えた、戦国大名、武田勝頼とその一族、家臣が祀られている。ここには首洗い池、生害石、姫ヶ淵などの地名が残されており、悲劇の歴史を今に伝えている。


天正10年(1582年)2月1日、武田家に属する国衆、木曽義昌は反旗を翻し、織田家に鞍替えする。織田信長は義昌からの援軍要請に応じ、大軍を催して信濃へ侵攻、ここに甲州征伐が始まった。同時に徳川家康も駿河に侵攻を開始し、ほどなくして北条氏政も動き出す。四面楚歌に陥った武田家では裏切り者が相次ぎ、領国は瞬く間に崩壊、兵も逃げ散って僅か数十人ばかりとなった勝頼一行は、行くあてもなく天目山(栖雲寺一帯の地域)を目指した。しかし、天目山の住民達は一揆を起こして受け入れを拒んだので、勝頼一行は田野の地で立ち往生してしまう。


天正10年(1582年)3月11日、山側は天目山の一揆勢によって遮られ、麓からは織田軍の先鋒、滝川一益勢が迫って来た事から、勝頼一行は田野を死地と定めた。勝頼一行の武士は僅か40人余で、その他に勝頼の妻、北条夫人と侍女達が20人余であった。それに対して、滝川勢は数千人であった。既に勝敗は決しており、残党狩りに等しかった。それでも死を決した武田の武士達は獅子奮迅の働きをもって、織田軍を防いだ。中でも土屋昌恒とその兄弟、金丸助六郎、秋山源三の働きは見事で、敵の織田方ですら称賛するほどであった。


武田勝頼の嫡男、信勝は若干16歳ながら、大竜寺麟岳(武田信廉の子息で出家の身)と共に織田軍を切って廻り、その武勇と華麗さは敵味方の目を引くほどであった。奮戦の後、信勝は、麟岳と刺し違えて果てたと云う。そして、忠勇の武士達も1人、また1人と織田軍に討たれてゆく。北条夫人と侍女達は読経を唱えた後、脇差を突き立てて果てていった。北条夫人は、勝頼から実家の北条家に戻る様、促されていたものの、これを断り最後まで夫に付き従ったとされる。若干19歳であった。勝頼はその遺骸を抱くと、しばし言葉を失った。それから我に返ると腹を十文字に描き切って果てたと云う。武田勝頼、享年37。


天正10年(1582年)7月、甲斐を領国とした徳川家康は、武田旧臣を懐柔すべく、田野の地に武田勝頼の菩提寺の建立を命じた。これが景徳院の始まりである。天正16年(1588年)、諸堂が落成したが、その後、火災を受けて諸堂は焼失し、現在は天保6年(1835年)再建の山門が残るのみとなっている。





↑景徳院




↑没頭地蔵


武田勝頼、信勝父子の首無し遺体は高台の中腹に埋葬され、後に地元の人々が3体の首なしの地蔵を祀ったとあります。


↑武田家の墓


中央が武田勝頼、右側が北条夫人、左側が武田信勝の墓石です。




↑武田勝頼生害石




↑北条夫人生害石




↑山門




↑本堂




↑景徳院 境内


高台にあって、勝頼一行は確かにこの辺りで最後を遂げたのでしょう。厳かで、悲哀を感じる場所です。




↑首洗い池


池は見当たらなかったものの、渓流が流れています。ここで勝頼ら武田方戦死者の首が洗われたのでしょう。




↑日川


現在は舗装されているものの、往時は細い山道であったでしょう。




↑鳥居畑古戦場跡


僅かな武田武士達が、主君の自害の時間を稼ぐべく、奮戦した地です。




↑武田勝頼像


甲斐大和駅前にあります。武田勝頼は勇将でしたが、長篠の敗北、北条家との開戦、高天神城の失陥、連年の戦と新府城普請の負担などが重なって人心を失い、終に田野の地で滅亡を迎えました。

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