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白川郷の戦国武将

2008.10.30 - 戦国史 其の一
白川郷一帯の戦国時代に少しばかり触れてみる。
 

戦国期、飛騨は山々に囲まれた小さな国で石高は3万8千石で動員数は950人ほどであったとされている。米の生産高こそ低かったものの、鉱物資源と山林資源を豊富に産出しており、貧しい国ではなかった。鉱物資源を例に挙げれば、天正元年(1573年)飛騨の土豪、塩屋秋貞が上杉謙信に鉛600kgを送ったとの記録もある。また、天正14年(1586年)に金森長近が飛騨に入部してからは、和佐保銀山、茂住銀山などが開発されて、隆盛を極めている。元禄5年(1692年)、飛騨が幕府の直轄領となった頃からは、銅、鉛の鉱山開発が相次いだ。さらに明治期に入ると三井組が神岡鉱山の開発を進めて、鉛の精錬が大規模に行われた。飛騨は山深く、農産物の生産には適していなかったものの、このように鉱物資源は豊富に産出する地域であった。


戦国期、白川郷一帯は帰雲山に築かれた帰雲城を本拠とした内ヶ島氏が治めていた。白川郷一帯は一向宗の影響が強かった事から、内ヶ島氏は、照蓮寺という本願寺系列の寺と深く結び付き、政教合体で統治した。内ヶ島氏は、帰雲城以外にも向牧戸城・萩町城といった支城を持つ有力な国人領主で、その財力を支えていたのが、支配地域から産出する豊富な鉱物資源であった。内ヶ島氏の最後の当主は、氏理(うじさと?)と云う武将で、彼の代になると照蓮寺とは手を切り、織田信長と誼を結んで、隣国、越中に赴任してきた織田家部将、
佐々成政と連携した。その後も成政との連携は続き、天正13年(1585年)、小牧長久手合戦の際には、氏理は徳川方に付いた佐々成政に味方して、自ら越中に出陣している。しかし、その隙に豊臣秀吉の命を受けた金森長近が、越前大野から白川郷に侵入してきた。


金森軍は内ヶ島氏の支城、向牧戸城に攻めかかって来たが、城将はよく守って、容易には落ちなかった。金森軍侵入の報を受け、氏理は急ぎ帰国したが、その頃には向牧戸城は落ちてしまっていた。戦っても利がないと悟った氏理は、長近の下を訪れ、献上金を差し出して降伏する。この結果、氏理は領土は削られたものの白川郷の本領は安堵された。 内ヶ島氏は鉱物の産出する場所を知っていた事と、多くの鉱山技術者を抱えていた事もあって、長近もこれを滅ぼす訳にはいかなかったのである。 当時、鉱物資源を採掘するためには独自の技術が必要であり、その技術を持つ者は少なかった。


この難局を切り抜けた氏理は、帰雲城に帰還する。しかし、氏理が帰雲城に帰還してから3ヶ月後、天正13年(1585年)11月29日、震度8の天正大地震が発生して帰雲山が大崩壊し、凄まじい地鳴りを伴った山津波が、帰雲城と3百余戸の城下町を一瞬にして呑み込んでしまう。 これにより内ヶ島氏理を始めとする1500人余の人々は、悉く土砂の下に埋もれてしまった。 この時、所用で他国へ出かけていた4人だけが助かったと云う。山深い飛騨の地で内ヶ島氏は豊富に産出する金で栄えていたとされており、この出来事をもって帰雲城の埋蔵金伝説が生まれる。


(余談)昔、旅行で白川郷を訪れた事があります。車で国道156号線を走って白川郷を目指していた時、山頂が大きく崩壊した帰雲山を見かけました。地震から数百年たった現在でも、山頂付近は茶色い土砂が剥き出しになっていました。その麓の地中深くには内ヶ島一族や多数の領民が今でも眠っている事でしょう。もしかすると黄金の埋蔵金と共に・・・



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