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越前平泉寺 

養老元年(717年)、平泉寺は、白山の開祖、泰澄大師の手によって創建された。以降、平泉寺は白山信仰の修験場として栄え、聖俗両界に影響を及ぼす、北陸屈指の大寺院となる。戦国時代、平泉寺は社領9万石、僧兵8千余を有していたと云われており、戦国大名に匹敵するほどの勢力を誇っていた。谷々には数多くの建物が軒を連ね、寺内には48の神社、36の御堂、6千軒の坊院(僧侶の家屋)があったとされている。


やがて、朝倉氏が勃興して越前の支配者となると、平泉寺もそれに従った。朝倉義景の代となって、近江に出兵するようになると、平泉寺も援兵を出している。天正元年(1573年)8月、義景は、織田信長に大敗を喫すると、従兄弟の朝倉景鏡と平泉寺の武力を頼って、越前大野まで落ち延びていった。だが、ここで景鏡の裏切りにあって、無念の自害を遂げる。そして、越前が信長の手に落ちると、平泉寺と景鏡はこれに忠節を誓った。しかし、翌天正2年(1574年)1月、越前において一向一揆が勃発すると、平泉寺に暗雲が垂れ込み始める。


越前全土に一向一揆の嵐が吹き荒れ、これに身の危険を感じた朝倉景鏡は、平泉寺へと逃れた。一向一揆は、景鏡を敵と見なしていたので、それを匿った平泉寺も敵と見なした。こうして、一向一揆の大軍が平泉寺へと押し寄せて来る。まず一揆軍は、平泉寺と目と鼻の先にある村岡山に砦を築き始めた。これに危機感を覚えた平泉寺は、主力を差し向けて攻撃したが、一揆勢の激しい抵抗に遭って攻めあぐねる。そして、この主力が出払っている隙に、一揆軍の別働隊が平泉寺へと向かっていた。


一揆軍は間道を伝って平泉寺の背後に出ると、一気に寺内に乱入した。一揆軍は、突然の敵襲を受けて逃げ惑う人々を斬り捨てながら、寺内を放火して回った。壮大な伽藍にも火が放たれ、高僧達は経を唱えながら炎に飲まれていったと云う。朝倉景鏡もここに至って最後を悟り、僅か3騎で一揆軍に斬り込んでいって討死を遂げた。多くの人々が住む、一大宗教都市であった平泉寺は業火に飲み込まれ、全てが灰と化した。その後、平泉寺は、豊臣秀吉と越前松平氏の援助を受けて復興を遂げたが、往年の大寺院の姿を取り戻す事はついに無かった。明治の世を迎えると、信仏分離令により、平泉寺は仏教色を取り除いた白山神社となって今に至る。


現在、白山神社は小さな社であるが、その周辺の山林には手付かずの遺構、遺物が数多く眠っている。近年の発掘作業によれば、青磁製の皿に茶碗、青磁製の燭台、鎧の断片、銅銭、硯、風炉、行火(あんか)などが見つかっている。これらの出土品は、僧侶達が豊かな生活をしていた証であった。さらに僧坊跡から見つかった中国、景徳鎮産の青白磁観音像は、極めて希少価値が高い物であって、平泉寺が相当な財力を持っていた事を窺わせている。



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↑平泉寺参道

この平泉寺こと白山神社は、福井県勝山市にあります。ここは山間の広大な敷地に小さな社がたたずむ、緑豊かで静かな神社でありました。現在、福井県で最も有名な寺は、永平寺だと思いますが、もし、この平泉寺が往時のまま残されていたなら、県下1の名刹として大いに賑わっていた事でしょう。しかし、現在では規模の大きな石垣跡だけが往時を偲ばせるばかりで、訪れる人も少ないようです。


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↑御手洗池(みたらしいけ)

この御手洗池で、泰澄大師は白山の神の信託を受け、神を祭る社を建てる事を決したそうです。池の近くには、石組みが残り、建物が建てられていた形跡がありました。かつてはこの池のほとりで、僧侶達が祈りを捧げていたのでしょうか。


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↑杉並木と緑の苔

静かで厳かな雰囲気が漂っていました。この平泉寺は苔の寺としても有名です。


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↑平泉寺のかつての姿



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↑草むした石畳の道

かつては左右に建物が立ち並んでおり、大勢の人々の往来があったのでしょう。文治3年(1187年)、源義経が兄、頼朝の手から逃れて奥州に向かう途中、この平泉寺に立ち寄ったと伝えられています。


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↑発掘作業現場

平泉寺の発掘作業は現在でも進められており、何時の日か、その全貌が明らかとなるでしょう。

この日は10月初めだったにも関わらず、まだかすかにセミの音が響いていました。



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