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戦国史を変えた医者

2008.11.18 - 戦国史 其の一
曲直瀬道三(1507~1594) は戦国時代の医者であり、日本医学中興の祖とされている。


永正4年(1504年)9月18日、道三は京都で生まれるが、幼くして両親を失い、伯母と姉に養われて幼年時代を過ごした。10歳で近江天光寺に引取られ、13歳の時に京都相国寺に移って僧籍に入り、そこで勉学に励んだ。22歳の時、関東に下って足利学校で勉学を続けるが、ここで名医として知られていた田代三喜斎と出会う。三喜斎は、仏教の慣習にとらわれず、実践的な医療を人々に平等に施さねばならぬと説くのだった。これにいたく感銘を受けた道三は入門して、医学を志す決意を固めた。


39歳の時、上洛すると還俗し、以後、医業に専念した。道三の実践的な医療は人々に受けいられ、その名声は広まる一方であった。そして、噂を聞きつけた将軍足利義輝に召し出されて、診療を行った。他にも細川晴元、三好長慶、松永久秀など、著名な武将にも診療を行うと、彼らは道三の医療に畏敬の念を抱いて、後に道三が医学生養成のため京都に啓迪院(けいてきいん)と称する医学校を設立せんとすると、多額の援助を送った。この啓迪院は、日本の医学教育史上、極めて重要な存在であるとされている。また、道三は織田信長の診療も行って、蘭奢侍(らんじゃたい・正倉院に納めてある貴重な香木の一部)を賜るという名誉も受けた。


道三は68歳の時、それまでの医書を簡潔に、そのうえに自らの診療経験を取り入れてまとめた医学書「啓迪集(けいてきしゅう)」を著す。

78歳の時、イエズス会の宣教師を診察したことからキリスト教に入信し、洗礼を受ける。

86歳の時、後陽成天皇より、橘(たちばな)姓と今大路の家号を賜る。

文禄3年(1594年)、道三は88歳という長寿を保って没した。

毛利元就や明知光秀と云った有名武将も病気になった際、道三の世話になっている。

永禄9年(1566年)、毛利元就は月山富田城を攻め立てていた際、長期滞陣が祟って病を患った。一時は重篤に陥るほどであったが、小早川隆景や吉川元春らが、京都から曲直瀬道三を呼び寄せ、懸命に治療にあたった結果、快方に向かった。尼子方は元就が亡くなれば状況は好転すると期待していたようだが、実際に元就が亡くなるのはそれから5年後、元亀2年(1571年)75歳の時であった。


永禄9年(1566年)の時点で元就が亡くなっていても月山富田城攻めは続行されていただろうが、優れた指導者を早くに失って、毛利家の発展は史実より遅れたかもしれない。もしくは九州攻めがなくなって、永禄12年(1569年)の大友・毛利の衝突、多々良浜合戦なども起こらず、中国地方にのみ勢力を伸ばしていって、逆に堅実な発展を遂げていった可能性もある。


明智光秀は天正4年(1576年)5月の石山本願寺攻めの後、過労のため病を患ってしまう。一時は死亡の噂が流れるほど症状は重かったが、曲直瀬道三の治療を受けるなどして2ヶ月ほど養生に努めた結果、病は快癒した。この時には光秀の妻、熙子も光秀を看病しており、病快癒のため、光秀の親しい友人であり、神官でもあった吉田兼見に祈念を依頼している。また、織田信長も心配して見舞いの使者を送っている。


しかし、光秀が快癒してから3ヵ月後、10月にはその妻、熙子は看病疲れによるものか病に倒れてしまう。そこで、今度は光秀が妻の病快癒のため、吉田兼見に祈祷を依頼した。その甲斐あってか、熙子は24日には快癒したそうだが、11月7日に急変して亡くなったとも云われている。もし、天正4年(1576年)の時点で光秀が亡くなっていたら、本能寺の変も起こらず、織田家の地味な部将としてほとんど名を知られる事もなかっただろう。光秀の病快癒には妻、熙子の懸命な看病と曲直瀬道三の治療の効果が大きかったのであろう。



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