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ドイツを目指した潜水艦「伊52」 其の一

1995年3月末、大西洋の広大な海原で、アメリカの冒険家達が海洋調査船に乗って、ある1隻の沈没船を捜し求めていた。その沈没船には金塊2トン(時価80億円以上)もの財宝が積まれているはずであり、彼らはそれを引き揚げる予定であった。しかし、調査を開始してから5週間を経ても、今だ沈没船は見つからず、クルーに諦めの色が浮かび始めた頃、ついに彼らはソナーの画面に、大きな黒い影を捉えた。謎の物体は、水深5千メートルの深みにあった。


水中カメラが海底に降ろされると、そこには、大小無数の傷が刻まれた鋼鉄の巨大な船体が映し出され、周辺にも積荷の箱のような物が多数、散乱していた。その船は、平らな甲板、異様に細長い船体、とがった船首、舵を保護するための鉄枠といった特徴があった。いずれも旧日本海軍が使用していた、伊号潜水艦の特徴であった。この潜水艦は第二次大戦中、機密任務にあたり、そのまま行方不明となっていた伊52である事が判明した。


●伊52の性能要目

全長108.7メートル

最大幅9、3メートル

排水量、通常2583トン

排水量、満載3,158トン

水上4,700馬力

水中1,200馬力

水上速力17.7ノット

水中速力6.5ノット

航続距離、水上16ノットで2万1千海里

航続距離、水中3ノットで105海里

53センチ魚雷発射管、艦首6門

前部甲板14センチ砲1門

後部甲板25ミリ機関砲1基

安全潜航深度100メートル

飛行機格納筒はもたない


1944年、第二次大戦後半、日本の敗色は濃厚となっていた。そこで日本は同盟国ドイツから最新の兵器技術を提供してもらい、そこに戦局挽回の望みを見出そうとした。しかし、ドイツ側も、ただでは最新技術を渡してはくれない。ドイツは当時、国内で枯渇していた戦略物資の提供と、巨額の対価を日本側に求めた。戦争に必要な戦略物資は日本でも不足していたが、日本側にはドイツの最新技術と交換し得る、優れた技術を持ち合わせていなかったので致し方なかった。


当時、日本とドイツとの間には、広大な連合国の勢力圏があって、航空機での両国の連絡は不可能であった。しかし、この困難な任務も、深海を深く静かに進む潜水艦ならば可能と思えた。そこで日本は、合計5隻の潜水艦をドイツへと送り出した。その最後の遣独潜水艦となったのが伊52である。伊52は、日本の呉から出港し、連合軍の厳重な哨戒網が張り巡らされた大西洋を超え、ドイツ占領下にあるフランスのロリアンを目指した。そこで新兵器類を積み込んで、再び日本に帰り着かねばならない。実に往復3万5千海里(6万キロメートル)もの過酷な航海であった。


この任務にあたる伊52の艦長と乗員のほとんどは、この訪独任務が非常に危険で生還する見込みが薄い事を知っていた。彼らは出発前それぞれ実家に里帰りをして、お世話になった人達に挨拶回りをすませ、遺書を書き残していった。伊52には民間の技術者達も乗り組む事になっていた。彼らも生還の見込みが少ない事を知っており、ある人は生前に自分の墓を立て、ある人は知人に、「生きて帰れる確率は4、5パーセントしかないだろう」と話していた。伊52には艦長、宇野亀雄中佐以下、軍人117名・ドイツ語通訳1名・技術者7名・合計125名の乗員が乗り込み、さらに49個の箱に収められた純度99,5パーセントの金塊146本、合計2トンが積み込まれた。


(1944年3月10日午前8時50分)、伊52は密かに呉を出港して行った。

二へ続く・・・
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