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エベレストに消えた謎 終

2009.03.05 - 歴史秘話 其の一
●調査隊が推測したマロリー、アーヴィンの遭難の様子


2人は頂上に達したかどうかはともかく、これまでに人類が到達した事のない高みに立った。しかし、疲労も甚だしく、酸素も切れていた。それでも2人は力を振り絞り、日没前に最大の難所であるセカンドステップを下り終える事に成功する。そして、ファーストステップも下り終えて、イエローバンドに達した時、辺りは闇に包まれた。マロリーは、ランタンと懐中電灯をキャンプに置いてきているので足元は照らせなかった。なので、ほのかな月明かりだけを頼りに、石灰岩の脆い岩の連なりを下りて行かざるを得ない。2人は水分不足や酸素不足に加え、極度の疲労もあって意識が朦朧としていた。それに最大の難所を超えたのと、キャンプを目前にした安堵感もあって、ふと心が緩んだのかもしれない。垂直な岩壁が横たわる危険箇所に差し掛かった時、マロリーは雪疵(せっぴ・雪の塊)を踏み外して、滑り落ちてしまった。


2人はロープで体を結び合っていたが、激しい衝撃によって切断されてしまう。その直後、マロリーは片足で斜面に着地した為、右足が登山靴の上で折れてしまった。そのまま急斜面を滑り落ちて、暗黒の谷底へと向かっていく。だが、彼は諦めず、体をひねって岩屑の斜面に指先を食い込ませて、体を停めようとした。手袋はすぐに裂けたが、それでも腕と指の力だけで必死に食い止めようとする。その最中、傾いた岩に打ち当たって、体が宙に舞い挙がった。そして、斜面に激しく叩きつけられ、尖った岩に額を激しくぶつけた。滑落の速度は緩んできて、ようやく体は停止した。しかし、致命傷を負ったマロリーが、再び立ち上がる事はなかった。


アーヴィンの方は、どうなったのだろうか。(1933年)イギリスの第4次遠征隊がエベレストに挑戦した際、標高8460メートル地点で、アーヴィンのピッケルを発見している。そのピッケルには滑落したような傷跡はなく、ただ岩の上に置かれていた。事故の際、アーヴィンは滑落を免れ、ピッケルをその場において親友を助けようとしたのだろうか。しかし、最早、どうする事も出来ず、1人で下山に取り掛かろうとして、途中で力尽きたのかもしれない。それとも、やはり事故の際、ピッケルを取り落として、一緒に滑落してしまったのかもしれない。いずれにせよ、アーヴィンは氷雪の山塊に倒れ、短い22年の生涯を閉じた。その遺体は、現在も発見されていない。マロリーとアーヴィンは、第6キャンプまで後僅かという距離に達していながらの無念の遭難死であった。



●マロリーとアーヴィン、その人となり


ジョージ・レイ・マロリー(1886年6月18日~1924年6月8日)

マロリーは牧師の子として生まれる。その風采は極めて優れており、整った顔立ちに洗練された雰囲気を漂わせていた。彼は非常に神経質なタイプで自身たっぷりだったかと思うと、心許なくなって沈み込み、感情の振幅が激しいところがあった。だが、登山者としての彼の能力に疑問を持つ者は誰もいなかった。山に向かって足を運ぶ、その軽快な足取りは誰にも真似できないものだった。

マロリーのもっとも優れていたものは、その魂であった。彼の意志力は尽きる事がなく、何かやるべき事があれば、何時でも行動に移る用意があった。彼は誰よりも早く行動し、出発する時は夜も明けきらない早朝だった。遠征隊の隊長ノートンは、マロリーの事を、「不屈の精神を持った男であり、チャンスがある限りは敗北を認めない」と評している。しかし、その一方で、「彼は愛すべき人物だったが、せっかちで行く先々で所持品をばら撒いていった」とも述べている。


マロリーは登山家としては際立った能力を持っていたが、管理能力はなかった。目の前の物事に集中すると、決まって大事な物を忘れてくる傾向があった。最後の忘れ物の中にはコンパス・夜間用ランタン・懐中電灯がある(荷物になるのであえて置いていったとも考えられるが、ランタン・懐中電灯を携帯していれば遭難は避けられていたかもしれない)。


このエベレスト挑戦時、マロリーはもうじき39歳となる年齢だった。肉体的に、これが最後の挑戦となる可能性が高かった。それに彼は、このエベレスト登頂に人生の意義を見出していたので、今回のエベレスト挑戦には並々ならぬ決意で向かっていった。彼は死も覚悟していたが、勝算の無い戦いをするつもりはなかった。彼は以前、「私は既婚者ですし、後先を考えずに飛び込むわけには行きません」とも述べている。帰りを待っている妻子もあったし、その当時に出来うる限りの手を尽くしてエベレストに挑み、そして、生きて帰る心積もりであった。


アンドリュー・カミン・アーヴィン(1902年4月8日~1924年6月8日)

アーヴィンは裕福な家庭に生まれ、少年の頃からバイクの旅をするなど生来の冒険家であった。彼には登山の経験は少なかったが、機械に極めて強い点と抜群の体力を買われて21歳の若さで遠征隊に加えられている。若さゆえの生意気な行動を取る事もなく、常識心に富んでいた。長身で顔立ちが良く、肩幅の広い好青年であった。そして、彼の仕事能力は大変なものだった。昼間、氷河で作業して疲れ切った後でも、テントの中で道具類を広げ、壊れやすく扱いにくい酸素器具の改良に取り組んだり、遠征隊の修理屋を勤めたりもしていた。彼はこの作業を皆が寝静まった後も、だいぶ遅くまで続けていた。


彼は肉体的にも精神的にも大人であり、年長者に対して控え目な態度を取りながらも、大人として行動していた。高い理想を抱いており、シェルパに対しても礼儀正しく接していた。マロリーとアーヴィンは共に理想主義で子供っぽいほどの無邪気さがあり、2人は出会ってすぐに意気投合する。マロリーの方が10年以上も年長であったが、2人は対等の親友となった。遠征隊の記念写真が残っているが、2人は隣同士で写っている。そして、写真に写るアーヴィンはいつも陽気に微笑んでいる。


Mallory1.jpg










↑後列左がアーヴィンでその隣がマロリー







↑マロリーの生い立ちや内面を知りたいなら、「エヴェレスト初登頂の謎 ジョージ・マロリー伝」が、1999年のマロリーの遺体発見時の様子、遭難の経緯、登頂の可能性を知りたいなら「そして謎は残った 伝説の登山家マロリー発見記」を読んでみるのが、よろしいかと。
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