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一乗谷 1

一乗谷は、越前の戦国大名、朝倉氏が築いた城下町である。一乗谷は山間の狭い谷間にあるが、往時には武家屋や町屋が所狭しと建ち並ぶ、1万人もの人々が生活を営む一大都市であった。朝倉氏は元々、但馬の武士であったが、南北朝時代に室町幕府の有力守護大名、斯波氏の家臣となって越前に入った。その頃から朝倉氏は、一乗谷を根拠地とした。


この一乗谷に繁栄をもたらしたのは、戦国初代の朝倉孝景(1428~1481)である。孝景は下克上の潮流に乗って、朝倉氏を一豪族の身上から越前の支配者まで押し上げた実力者であった。以降、戦国5代目の朝倉義景に至る100年余の間、一乗谷は越前の政治的中心地として発展を続ける。特に一乗谷の文化的興隆は目を見張るものがあり、朝倉氏の居館を始めとして、武家屋、町屋では盛んに作庭が行われ、そこで歌が詠まれ、茶会が催された。


一乗谷からは数多くの茶器が出土しており、それらは武家屋、町屋、寺院など城下のあらゆる場所から発見されている。また、硯(すずり)が700点以上も発見されている事から、文芸が盛んで住民の識字率と文化水準は極めて高かったと推測されている。一乗谷の華やかな文化を聞き付けて、訪れる公家や文化人は数知れず、歴代の朝倉当主はそういった人々を迎えては、和歌や連歌の会を催した。


当時の京は戦乱の影響で荒廃しており、そこに住む公家達にとって、一乗谷は憧れの土地であったらしい。当代一流の和漢の学者であった清原宣賢(1475~1550)は、この一乗谷を終焉の地と定め、晩年の8年間を過ごしている。永禄11年(1568年)、後の室町幕府第15代将軍となる足利義昭もこの一乗谷を訪れ、手厚い歓待を受けている。


一乗谷の中心には室町御所を模した朝倉氏の居館があり、堀と土塁が廻らされていた。朝倉居館の背後にある城山(標高473メートル)には一乗谷城が築かれて、朝倉氏の詰めの城となっており、対面する山の峰にも断続的に砦が築かれていた。また、一乗谷の北には長さ150メートルの巨大な土塁、上城戸が築かれ、南には朝倉氏の権威を見せ付けるべく、巨石を用いた石垣造りの下城戸が築かれていた。言わば、一乗谷全体が巨大な城郭となっていたのである。華やかな文化の営みを、堅固な城郭が包み込む。朝倉氏の栄華は、このまま続いていくかに見えた。だが、戦国の荒波は、平和を謳歌する一乗谷にも迫ろうとしていた。


元亀元年(1570年)4月、戦国の風雲児、織田信長が突如として、越前に攻め上ってきたのである。一乗谷と朝倉義景は危機的な状況に陥ったが、この時は浅井長政が信長の背後を襲ってくれたので、窮地を脱する事が出来た。その後も義景は長政と協力して信長と戦い続けるが、戦況は悪化の一途を辿った。そして、天正元年(1573年)8月、ついに義景は、刀根坂にて致命的な敗北を喫してしまう。主力を喪失した朝倉家に、最早、信長を防ぐ術は無かった。


国境は瞬く間に突破され、織田軍は一乗谷へと迫り来る。義景は一乗谷を捨てて越前大野へと逃れたが、そこで同族の景鏡の裏切りに遭い、自刃に追い込まれた。織田軍接近の報を聞いて、一乗谷は恐怖に慄き、逃げ惑う人々で大混乱に陥った。そこへ織田軍が一乗谷に突入してきて、寺院、町屋を問わず、あらゆる箇所に火をかけて回った。その炎は数日に渡って燃え盛り、一乗谷100年の歴史は、灰燼と化したのだった。


義景滅亡後、信長は朝倉旧臣であった桂田長俊を一乗谷に置いて、越前の統治を委ねた。だが、桂田長俊は専横の振る舞い多く、同僚の富田長繁と越前一向一揆の蜂起を受けて、一乗谷にて攻め滅ぼされた。以後、越前は一向一揆の支配する所となったが、天正3年(1575年)、信長は再び越前に攻め入って、一向一揆数万人余を撫で斬りとした。信長は平定成った越前の統治を、柴田勝家に委ねた。勝家は統治拠点を北ノ庄(福井)に定めて、一乗谷から寺院や住民を移転させていったため、荒廃していた一乗谷は一層衰退し、以降、町並みの多くが田畑へと変わっていった。


一乗谷は忘れ去られた幻の都市となったが、昭和42年(1967年)に発掘調査が始まると、戦国時代の町並みがほぼそのままの形で残っている貴重な遺構であると判明した。そして、国は、一乗谷を特別史跡、特別名勝、重要文化財の三重指定とする。今でも湯殿跡庭園や、諏訪館跡庭園などの見事な庭園は静かに水を湛え、かつての一乗谷と朝倉氏の繁栄振りを偲ばせている。

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